遊戯王OCGの転換点となった1枚のカード
現代で使うために考えうるポイントをまとめました
/所要時間5分
《冥府の使者ゴーズ》の徹底考察・再評価
皆様お久しぶりです。管理人の「Librarian」です。
最近は新規記事もあまり書いておらず、かなり長めの停滞期でしたがようやく気力がわいてきました。
やっぱり定期的に離れた方が面白いアイデアとか浮かんでくるんですよね。
今回紹介したいのは2005年~2012年にかけて環境カードとして名を連ねた《冥府の使者ゴーズ》。
久しぶりに使いたくなってデータベースのデッキレシピを覗いてみたところ、全く現代のデッキに採用されておらず完全に過去のカードとなっていました。
オリジナルデッキですら採用されていないというのは異常ですよ。
ネタカードとして有名な《ゲート・ガーディアン》に負けてるし。
そこで《冥府の使者ゴーズ》をどんなデッキで使うと強いのか考察・再評価してみようと思います。
使ってみたいけどどうやって考えればいいの?という方はぜひ最後まで読んでみてください。
動画でさらっと見る
採用する上での5つのポイント
おさらい
星7/闇属性/悪魔族/攻2700/守2500
自分フィールド上にカードが存在しない場合、相手がコントロールするカードによってダメージを受けた時、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
この方法で特殊召喚に成功した時、受けたダメージの種類により以下の効果を発動する。
●戦闘ダメージの場合、自分フィールド上に「冥府の使者カイエントークン」
(天使族・光・星7・攻/守?)を1体特殊召喚する。
このトークンの攻撃力・守備力は、この時受けた戦闘ダメージと同じ数値になる。
●カードの効果によるダメージの場合、受けたダメージと同じダメージを相手ライフに与える。
かっこいい!やっぱ遊戯さんが使っただけあるねー
昔は反転攻勢が得意だったから採用されていたんだよね?
除去カードも少なかったし、現代とはだいぶ状況が違うような…
そうね。ゴーズを使う上で考えるべきポイントは多いわ。
「使いたい」以上の採用理由を見出すのが難しいのよね。
キャラクター:by CoeFont.CLOUD
まず、現在の前提として《冥府の使者ゴーズ》は脅威ではありません。
防御目的であれば、《バトル・フェーダー》《PSYフレームギア・β》、《E・HEROスピリット・オブ・ネオス》、《クリフォトン》など《冥府の使者ゴーズ》以上に安全にLPを守ってくれるカードはいくらでもあります。
レベル7を活かそうとしても特殊召喚しやすいレベル7が増えたおかげでランク7特化のデッキですら入れない方が強いという結果に陥りやすいです。
また、サーチすると利点である奇襲性も失われてしまいます。
厳しい特殊召喚条件は永続魔法・永続罠・ペンデュラムモンスターなどのシステムカードとの相性も悪く、最も採用しやすいであろうミッドレンジ型のデッキで採用しにくいという問題点を抱えています。
テーマデッキの概念が薄かった時代では一枚一枚のカードパワーが大事なグッドスタッフ系デッキが主流でしたが、デッキ全体のシナジーを優先するようになった現代では孤立しやすいモンスターは不要という考え方が一般的となりました。
つまり、《冥府の使者ゴーズ》はステータス面のシナジーがあまり期待できない上に、純粋にドローで引き込まないと利用価値が激減するため、現代のゲームにそぐわないカードであるという認識で概ね正しいです。
《冥府の使者ゴーズ》は現代のデッキでは利用価値がないのか?
まずは《冥府の使者ゴーズ》を採用するために必要な構成要素から考えてみることにしました。
考えた結果はこちらです。
・デッキ圧縮とドローでサーチせずに引き込む方法
・特殊召喚を安全に通すための方法
・特殊召喚後のメイン2以降の利用法
・類似カードを織り交ぜてミスリードを誘う
デッキ内での《冥府の使者ゴーズ》の存在意義を確立し、採用理由を突き詰めるとこうなりました。
これら5つの要素全てと言わずとも採用理由を明確にしておかないと他のカードでも代用可能となってしまいます。
ただ単純にランク7デッキの補佐として採用しても無駄になるように、ほとんどの現代デッキでは《冥府の使者ゴーズ》を使う理由を見出せないのです。
次にこの5つの要素を分解しながらどんなデッキに採用できるか考えてみましょう。
上から順番に難易度が上がってくるので自分だったらどんなデッキにしようかなと考えながら読み進めてみてください。
自然にフィールドレスにする方法
《冥府の使者ゴーズ》を効果的に使うためにもフィールドレスにする手段は必須です。
《ブラック・ローズ・ドラゴン》や《ブラックフェザー・アサルト・ドラゴン》、《トポロジック・ゼロヴォロス》、《D-HEROデストロイフェニックスガイ》《天霆號アーゼウス》《光と闇の竜》《激流葬》などが使いやすいですね。
あるいは《永遠の魂》や《炎王の孤島》など除去されると自分フィールドが全壊してしまうようなカードを軸に考えてみるのもいいでしょう。
フィールドレスを狙うこと自体は相応のカードパワーを持ったカードが多いおかげでそれほど難しいことではありません。
永続魔法・永続罠等を採用したいデッキであったとしても《妖精伝姫-シラユキ》をうまく利用できれば、ある程度までなら併用可能です。
《冥府の使者ゴーズ》は中盤に最も利用価値が高まるカードです。
序盤は手数で容易に除去されてしまいますし、終盤はLPが足りずに特殊召喚する前に敗北してしまいます。
つまり、中盤を長く続ける余裕のある構築にする必要があります。
相手の特殊召喚を抑制しつつ、LPに変換できる《儚無みずき》は相性がよいといえますね。
うんうん、ここはまだ簡単だねー
《永遠の魂》型ゴーズとか楽しそう
デッキ圧縮とドローについて
サーチせずに引き込む方法としては《補強要員》や《聖邪のステンドグラス》、《バウンドリンク》《ガーディアン・キマイラ》《光帝クライス》《クロノダイバー・リダン》《鎖龍蛇スカルデット》《増殖するG》などがあります。
ドロー手段は豊富ですがフィールドレスと相性のよいカードである必要があり、単発で使えるカードを多く取り込むのが得策です。
《聖邪のステンドグラス》はゴーズ&カイエントークンの特殊召喚後にも有効利用できるので採用する価値がありそうですね。
ゴーズの使用回数はLP回復を挟まない限りは1ゲームにつき1度が限界です。
序盤で手札交換を繰り返し、中盤までに引き込めなければゴーズを採用する意味があまりありません。
《冥府の使者ゴーズ》はよほどデッキビルドが上手くない限り、サブアタッカーが適任です。
このことは過去(2005~2012)の環境デッキを確認することでも分かるかと思います。
メインとなるアタッカーは別に用意しておきましょう。
ゴーズの採用枚数は2枚が妥当ね。
40枚デッキで初手含めて10枚分引き込めれば期待値は0.5になるわ
デッキ圧縮と合わせて積極的に引いていけば何とかなりそうね
あえてサーチ・サルベージして相手のダイレクトアタックを躊躇させるという使い方でも面白いです。
この場合は《冥府の使者ゴーズ》を見せびらかして牽制するのが最大の使い方になるので、実際には使えなくてもOK。
《Into the VRAINS!》で闇属性悪魔族リンクが破壊された場合にサルベージするなどが分かりやすいですね。
特殊召喚を安全に通す
《フルール・ド・バロネス》や《召喚獣メルカバー》など制圧効果や発動無効を備えたモンスターが増えたことで、ダメージステップの特殊召喚も安全に通すことが難しくなりました。
安直にフィールドレスにすると簡単に制圧されてゴーズを通してもらえずにゲームが終わってしまいます。
さらに《アクセスコード・トーカー》や《サイコ・エンド・パニッシャー》などATK5000を超えるようなモンスターも残りのLPが消し飛ぶので《冥府の使者ゴーズ》との相性がすこぶる悪いです。
バトルフェイズ前に勝利宣言してしまう人も多そうですけど、そんな人には「それはどうかな?」と言っておきましょう。それだけでも楽しいですよ。
ロングゲームを目指したいのにも関わらず、自分フィールドを解体しながら相手の展開を崩していくという難儀なプレイングと構築を要求されるので、多くのプレイヤーが途中であきらめてしまうのかもしれません。
ゴーズは必ずしも魔法・罠との相性が悪いわけではなく、積極的に取り込むこともできます。
フリーチェーンの速攻魔法・通常罠であれば《冥府の使者ゴーズ》との併用も可能で、《ドラグマ・パニッシュメント》や《異次元グランド》などを採用すれば相手の展開を鈍くすることができます。
さらに構築の難易度は上がりますが、《聖なるバリア-ミラーフォースー》などの攻撃反応系カードをチラつかせて除去させた後に《冥府の使者ゴーズ》を狙うという戦略も取れそうです(ミラフォ等が通ればそれはそれでよし)。
ゴーズと罠カードは相性が悪いという認識は捨て去った方がいいんだねー
バトルフェイズ中に自然にフィールドレスを狙えるのもいいよね
特殊召喚後の利用法
1枚のカードで平均5000打点を形成できるカードは受動的なカードの中では以前トップクラス。
ただ、打点形成が得意とはいえ《冥府の使者ゴーズ》のように受動的なカードをエースに据えると、デッキが上手く回らずに空中分解しやすいです。これは相手に強く依存している以上仕方がない。
《冥府の使者ゴーズ》は単独で使いやすい一方で、他のカードとのコンボ性に乏しく除去されずに相手ターンを乗り切るのが困難なカードです。
無理してコンボを狙うと事故を起こしやすく、ゴーズを絡めたコンボは組み込まない方が強いです。
たとえば《冥府の使者ゴーズ》+《ホップ・イヤー飛行隊》の組み合わせは奇襲性も高く、一見相性がよいです。しかし固執するとほぼ間違いなく事故ります。
「メルフィー」と《冥府の使者ゴーズ》との戦術的な相性もよいものの、《ホップ・イヤー飛行隊》をメイン2まで温存しておく意味がほとんどありません。
むしろ《ホップ・イヤー飛行隊》はレベル2モンスターと《うきうきメルフィーズ》や《虹光の宣告者》等に繋げて、バトルフェイズ前に相手の妨害に使った方が効果的です。
構築の際には【メルフィー】や【PSYフレーム】のようにデッキ全体が《冥府の使者ゴーズ》の特殊召喚に適しているかどうかが一つの指標となります。
その上できちんと考えると召喚条件の厳しいゴーズにコンボさせるのは無理があるという結論にたどり着きます。残ればシンクロ召喚が狙えるくらいに考えておく程度でいいかもしれません。
『コンボに期待せずになぜゴーズを採用するのか』
難しいけれど、この理由付けが構築のカギになるわ
類似カードを織り交ぜてミスリードを誘う
《冥府の使者ゴーズ》の後継ともいえる手札誘発といえば《無限泡影》と《拮抗勝負》があります。
2枚とも環境デッキで使われており、実績はすでに過去の《冥府の使者ゴーズ》と並んでいるといえるでしょう(昔はそれくらいゴーズが当たり前に採用されていた)。
どちらにせよフィールドレスになりやすいデッキなのでこの2枚の発動条件も満たしやすく、自然と候補に入ってきます。
相手の思考の中で主要な手札誘発をどうやって潜り抜けるかを考えている矢先にゴーズを宣言すれば混乱することは必須です。
もう分かってきたかもしれませんが、強力なデッキを構築しなければ《冥府の使者ゴーズ》を引き立たせにくいです。
強いデッキであれば相手の制圧や妨害をいなす力が十分にあり、ゴーズをアタッカーとして残せる確率が上がります。
また、ゴーズに除去を使われてもデッキの主戦術に影響がありません。デコイとして見ても優秀です。
+αの戦力として欲しいかどうかが《冥府の使者ゴーズ》の最大の採用基準といえるかもしれません。
しかし、元々強いデッキにゴーズは不要という矛盾を抱えており、その微かな隙間を縫うようなデッキは存在しないのでは…?と諦めかけました。
ゴーズ特化のオリジナルデッキも検討しつつ、200以上あるテーマデッキの中から1つだけ見つかりました。
【マリンセス】に採用?
1枚初動がめちゃくちゃ多い【マリンセス】
言うまでもなく、環境クラスのデッキと互角に戦える実力があります。
そんな【マリンセス】に《冥府の使者ゴーズ》を入れる利点があるのか?
ポジティブな理由・ネガティブな理由問わずに採用材料はこれだけ揃っています。
・多くの手札誘発を採用でき、長期戦に持ち込みやすい
・フィールド魔法を破壊されると盤面が全壊しやすい
・自分ターンの横展開がやや難しくアタッカーが欲しい
・《増殖するG》にとても弱い
・《儚無みずき》を自然に採用できる
・《海晶乙女グレートバブルリーフ》の継続ドローで引きこみやすい
【マリンセス】はデッキの構造上、リンク召喚を多用しなければ満足に戦うことができません。
《エルシャドール・ミドラーシュ》や《サモンリミッター》で特殊召喚の回数を制限されたり、《増殖するG》で展開を抑圧されると手も足も出ないターンがあります。
さらに横展開の方法が乏しく、「ビーステッド」や「ジャックナイツ」のように横展開で攻めることのできる相手にはやや苦戦を強いられます。
これらの弱点を《冥府の使者ゴーズ》がカバーできるといえば聞こえがよくありませんか?
なお、使う場合は必ずモンスターゾーンの両端にゴーズ&カイエントークンを出してください。
【マリンセス】にゴーズを挿すのがよいのか、ゴーズ軸のデッキを組むのに「マリンセス」を基盤にした方がよいのかはまだ検証できていませんが、比較的相性がよいのは間違いないです。
え?【マリンセス】に採用するの?
理屈は分かるけど本当に強いの?
実際に使ってみるとわかるけど、他では代用できない役割なのよね
ブルータンで捲れるだけでも相手に警戒心を与えられるわ
まとめ
現代のカードプールで使う《冥府の使者ゴーズ》についての考察でした。
強いカードではなくなりましたが、こんなにカッコいいのに誰も使わないなんてありえないですよね。
これを機に面白いデッキを組んでやるぜという方が増えてくれれば嬉しいです。
構築のブレイクスルーを起こすには、多くのプレイヤーが考案するのが一番です。
ある種の思い込みが足枷となっているので幅広いアイデアがあれば、もっとこのゲームは面白くなるはずだと思っています。
シリーズ化・動画化も検討しているのでこの記事が面白かったと思ったらコメントとかください。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
コメント